メカデザインをする際のポイント解説~実践編~
はじめに
こんにちは!
G2 Studios株式会社 ビジュアルデザインDivイラストグループ所属のS.Yです。
前回に引き続き、イラストのデザイン、特に「メカデザイン」をする際に気をつけるポイントについて、業務にあたる際、どのようなことを考えて、どのような作業をしているのかを解説していきます。
私の経験が誰かのお役に立てれば幸いです。
▼前回の「考え方編」はこちら
実践編
今回「レールガンを携帯用武器にデザインしてください」という仮定の発注があった際を想定して描いてみました。
考え方は
そのものを知る
そこから何を残し何を削ぎ落とすか
今回「レールガン」ということで
そのものを知るためにも構造をリサーチしなければなりません。
レールガンとは…
電位差のある2本の電気伝導体のレールの間に、電流を通す電気伝導体を弾体として挟み、この弾体上の電流とレールの電流に発生する磁場の相互作用によって、弾体を加速して発射するものである。
太字部分とその他の残す部分を判断し、そこから関連してデザインをしていきます。
必要=残そうと思った部分
2本の電気伝導体のレール
電磁加速させる為の長いバレル
電流を通すということで電気を発電させるコンデンサorバッテリー
銃であるために必要な機関部、引き金、グリップ、無反動で無いことからの肩当て
▼一例ですが実際に描いたものです。
メカとして基本的な考え
その時代の人が作る以上、人為的に出来ていることからデザインにはその世界の人々が意図した部分が必ずある。
デザインする上でも上記を意識してくのは最低限必須になります。
描く際の技術的な事や考え方
塗り方
基本的にメカ=金属的なものを描く際には金属特有のテカリを描く技術がなければいけません。
応用でサビやその時代の新素材等他にもありますがまずはテカリを例に実際に描いてみましょう。
①地塗り
テカリ=まわりの映り込みになりますので反射を考える必要があります。明るい部分・暗い部分のコントラストの強さがあるほど金属特有のテカリを表現することになります。締め部分を後から描くことでボケた印象もなくなるので最初に描く地塗りが、かなり重要になります。
②ハイライト処理
目立つため入れたくなる気持ちを抑え、ハイライトは全体にひかない。
光源を考えひくべきポイントを考える。
③タッチ
塗り方は色々ありますが、筆を運ぶ方向をあえて残す事でそのものがより立体を引き立たせることができます。下の絵の左側は床に置かれた箱をただキレイに塗っただけですが、右側は縦方向にあえてタッチを残しています。床に立って見える効果が出るためタッチの方向は画作りにあわせて変えていくことで品質を上げる事に役立ちます。
構造の連続性
人が作る際にある一定の連続性が発生します。そこを意図的に入れ込むことでより説得力のあるイラストに繋がります。
下の戦車ではリベットや履帯等、様々な物が等間隔で連続的に配置されています。
パース
メカを描く際、パースを理解しなければなりません。
直線的なデザインが多いメカでは、他のデザインに比べパース図法ができないと非常に違和感のあるデザインができてしまいます。
イラストという媒体のため設計図ではないので多少の間違いは問題ないですが、それでもパッと見で違和感がでないよう最低限のパース感覚とそれを描く技術が必要になります。
同じ立方体でも見る高さ角度で変化します。
パースとは遠近法のことであり変化の法則になります。
パースが苦手な方は技術を習得するのが難しいかもしれませんが、今の世の中にはパースを描く際あたりとして使える3Dモデリングソフトがあるのでそれを利用するのも良いと思います。
やり慣れることでいずれパースの法則に慣れていく事もあります。
モデリングからの作画の工程
モデリング→線画によるデザイン
下は社内用に描いたメカロボのコンセプトですが、複数のスキルが合わさって可能になります。
メカ・背景・人・エフェクト この辺がある程度描けないといけません。
簡単ですが工程を踏まえて初期ラフ案から紹介します。
ラフレイアウト (今回一番最後のものを採用)
細部は決まっていないものの根幹はここの出来です。ここで今後の絵の良し悪しが決まっていきます。
ラフデザイン
レイアウトやロボのシルエットを意識しつつ、今回は重装甲のロボのイメージで描いています。この段階ではロボ・戦場と色々な思いや妄想を膨らませ試行錯誤です。
今回はデザインをしっかりしたいなと思いしっかりした線画になりましたが、人によってはもっと粗い感じで色塗りをすぐに行う方もいます。
着彩 色々な試行錯誤があり初期ラフとは違う部分はあれどなんとか完成
まとめ
時代考証
機能の意識
基礎部分+技術関係
自身の作家性を入れ込む
1〜3を常に試行錯誤することで4の作家性が徐々に培われていき、それがセンスとなりその過程で描く技術を身につけていく事になるはずです。
一朝一夕で、できる事はなく、日々研鑽を重ねることが大切です。
日々の研鑽は今まで培った技術の維持だけでも大変ですが、向上となるとより研鑽が必要になります。絵に終わりはなく一つの分野に秀でるだけでも大変ですが、色々ある複数の分野のスキルを磨くのは一生かかっても終わらない課題です。
AIが絵を描く時代が到来し、人間が絵を描くという機会も今後ぐっと減ることになり、今後修行を行う人達にとってはますます研鑽の機会は大幅に減り大変かと思います。ですが、その分自力でしっかり描けるということは貴重なスキルになるのかもしれません。
ご覧になった方が今回の解説をきっかけにイラストやデザインをする際にお役に立てれば幸いです。
ご閲覧ありがとうございました。
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