Adobe MAX 2022レポート/一部の新機能の検証含む
こんにちは!
UIデザインを軸に研究開発を行っているデザイナーのHayatoです。
デザインに携わるようになり早20年。雑誌やweb、広告などのデザインを経験し、10年前からゲーム業界でUIデザイナーとして勤めてまいりました。2022年の4月から研究開発のチームに異動し、xR領域やメタバース、ゲームUIについての研究を進めています。
今回は先日開催されたAdobe MAXの内容をお届けしたいと思います。
やってまいりましたAdobe MAX!
リモートワーク化が進む昨今、全体的に共有部分の連携が強化されているのが特徴的でした。新機能も沢山リリースされていて、ワクワクが止まりません。
画像生成のAIが巷では話題ですが、AdobeもAIの処理に力を入れており、その機能が随所に取り入れられていました。
今回はキーノート(日本版)で紹介された新機能を中心にゲーム開発の観点から、まとめてみたいと思います。
illustrator
新機能、「クロスと重なり」Intertwine objects
和訳すると「重なりと重なり」???というツッコミは置いておいて。
イラストと文字の重なりを利用したグラフィックを作成するときに役立ちます。
文字をアウトライン化してパスで削除やマスクを重ねて作成していましたが、Photoshopのようになぞってマスクできるようになっています。
デモンストレーションではかなり有効な機能に見えますが、
実際に使ってみると・・・・
若干、癖がありました。
コツとしてはやや大きめに囲う感じでなぞるのが良いみたいです。
ちょっとミスるとやり直しが効かないので、一発でくり抜かないと「後から追加で!」というのは難しい。
今の所はミスったら選択を外して(Mac:Command + Z/WIN:Ctrl + Z)で戻して、対象オブジェクトを再度選択して
「クロスと重なり」から「編集」で再調整します。
フォントを非破壊でファミリーを変更できるとありました。
「クロスと重なり」でくり抜いたマスクが保持されながらファミリーを変更することができます。
しかしこれはPhotoshpで言うマスク処理した状態なので、ずれる時もあります。
(流石にこの辺はアップデートされないかな・・・?)
クイックアクション
複雑な作業をこのクイックアクションで簡略化することができます。
Photoshopでいうアクションですね!
便利なのは間違いない。作業効率も上がる。
が、しかし・・・・
ご覧いただいた通り、クイックアクションの数がまだまだ少ない。
現在のところ、自分で作成したプリセットを追加できないようなので、今後のアップデートに期待したいところですね。
Photoshop
キーノートではweb版も機能が充実している事のデモンストレーションから始まり、新機能や魅力を紹介する内容となっていました。
こちらもクイックアクションにテンプレートが追加されていますが、あえて説明はしません。
ニューラルフィルターも強化されているようですが、以前検証した結果よりも特段に優れているかというとそうでもなかったので、こちらも割愛。
ライブグラデーションツール
通常のグラデーションツールとは異なり、細かい色範囲の調整を視覚的に行えるようになります。
効果の結果をリアルタイムで確認しながら作業を進めることができます。
今回のアップデートには追加されていませんでしたが、間も無くという事だそうです。
次に記載しているオブジェクト選択ツールと合わせて使えば、木漏れ日の表現も一瞬でできると思います。
ゲームの制作現場としてはUIよりもイラストで使用する場面が多いかもしれませんね。
オブジェクト選択ツール
今回のアップデートで複雑なオブジェクトを選択できるようになりました。
キーノートでは分かりやすすぎる写真だったので、AIが作成した複雑な画像で試してみました。
ちょっと意地悪な感じですが、認識はかなり高いように思います。
当然イラストの曖昧な境界線は認識率は下がりますね。
オブジェクトを認識する技術はAIを用いているそうです。
ゲームの開発現場ではキャラの切り抜きだったり、アイテムの切り抜きに使うと有効かもしれません。
今回もちょっと意地悪な画像で試してみました。
オブジェクト選択ツールは、少し前から追加されていた機能ですが、格段に精度が上がっています。
髪の毛も自然な形で切り抜かれているのが分かります。
人物と背景が暗い場合もしっかりとAIが認識して切り抜いているのが凄いですね。
これに関連したセッション
Photoshop Game-Changing Features Every Designer Should Knowは
上記の内容とダダかぶりしているので、時間がない方は見なくて良いかもしれません。
Adobe Express
約10万点のテンプレートがあるデザインツールです。
特徴的なのはwebで作成するので、挙動が非常に軽いということです。
チラシやSNS広告などのデザイン向けで、一見すると、ゲームの開発現場ではあまり利用価値がなさそうに思います。
だがしかし!!
フォントに対してAI処理が入るそうです。
シーンの背景やオブジェクトに対してAIが処理してくれるそうで、実装されればタイポグラフィで見せるイベントやガチャのバナー制作に有効かと思います。
イマジネーションを拡張してくれるAIが導入されるというのは、期待が膨らみます。
また、ホームページ作成サービスの「WiX」と連携が強化されているそうです。
Adobe ExpressとWiXの編集画面を行き来せずに、webページが変更可能になるそうなので、
ゲームのプロモーションをwebで行う場合、デザイナー側で完結できる部分が多くなると思います。
(これは私見ですが、Adobeのツールは将来的に全てwebに移行されるんじゃないかなぁ)
substance 3D
今回のキーノートで衝撃的な内容だったのが、こちらのsubstance 3Dでした。
近年、ゲーム業界以外でも需要が高まっていることもあり、Adobeはsubstanceに力を入れて開発していました。
実際にシューズメーカーのSALOMONは開発の工数を67%縮小し、10倍のプロトタイプを制作できたそうです。
ゲーム業界でもsubstance 3Dを多くのタイトルが使用してるとのこと。
代表作としては、「Baldur's gate」「ELDEN RING」「Dying Light 2」「CYBERPUNK 2077」「IT TAKES TWO」「HALO INFINITE」だそうです。
キーノートでは詳しい説明がありませんでしたが、こちらのUsing Substance 3D Painter for Metaverse Contentという講演を試聴したら理由がよく分かりました。
あらゆるテクスチャーを一括で非破壊編集ができるとのこと。
急な修正にもすぐに対応できるので、効率的に制作ができるそうです。
substance 3D asset
あらゆるオブジェクトのアセット、マテリアルが利用でき、ゲーム開発での組み込みが認められています。
web版ではそのアセットの一覧を見ることができるので、これからの制作の参考にしてみてはいかがでしょうか?
見た感じとりあえず一通り揃ってそうですが、人物や動物、モンスターなどはなさそうです。(残念・・・)
substance 3D モデラー
粘土をこねるように直感的に3Dオブジェクトを制作することができます。
デモムービーでは所謂Zbrushのような感じでした。
その中でもデスクトップモードからVRモードへの切り替えがスムーズに行え、より細かい調整ができるとのこと。
そしてsubstance 3D painterと連携すればテクスチャーの変更はもちろん、経年劣化の傷や凹みを、オブジェクトを調整しながらテクスチャーも同時に再調整できるようになります。(こちらも実際検証してみたいところですね)
Photoshopの3D関連の機能が軒並み利用停止になった経緯を見ると、こちらのsubstance 3Dを使ってくれという事なんでしょうね。
Premiere proとFlame IO
ゲームの開発の現場ではあまり使う事がないアプリケーションですが、
情報共有と連携が強化されていました。
映像の制作現場でもリアルタイム化の波が押し寄せているようです。
映像制作は時間の流れで管理しているので、全体の動画をみてフィードバックをするには
コミュニケーションコストがかかりますよね。
しかし!「Flame io」と「Premiere pro」を連携すると、コメント欄が追加されます。
ここがミソ。
修正したい箇所にフィードバックなどのコメントを記入すると、その部分がハイライトされます。
つまり、どの映像のどの部分を修正したいのか、部分的に伝える事ができるのです。
Photoshopにも欲しい機能ですね!
詳しくはキーノート(日本語版)47:00あたりを試聴してみてください。
NFTについて
キーノートでNFT関連について少し触れていました。
Adobeはオンラインデータの出所と信頼を確かにし、フェイク情報と戦うため、3年前にContent Authenticity Initiativeを設立し、800を超える企業が参加中です。
来年にかけてPhotoshopやLight roomに改ざんできない、証明データを付与する仕組み(NFT)を実装する予定とのこと。
こちらは現在、Photoshopのベータ版に実装されていますね。
β版でもMeta Muskのウォレットと正常に連携ができているのを確認していますので、かなり早い段階で正規版になるのではないでしょうか。
そしてビックニュースとして取り上げられたのがNikonのデジタルカメラがContent Authenticity Initiativeに対応したカメラを販売するという発表でした。
カメラマンが撮影したデータの著作権を保護し、デジタル証明(NFT)を付与する仕組みを実装するそうです。
カメラにいつどこで誰が撮影したのか、改竄できない証明書を付与するそうです。
今後もContent Authenticity Initiativeに力を入れていく決意を感じました。
これを聞いてSNSや個人のブログに関して、自ら撮影したものや制作したもの以外
無断で転載できなくなっていく可能性が高くなったなと思いました。
コピーを大量に作成していたweb2.0から、個人の権利が守られる時代のweb3.0へと進んでいきますね。
そして人と人がより密接した社会になっていくのかもしれません。
終わりに
さて、いかがでしたでしょうか?
今回のAdobe MAX 2022は新機能の追加のみならず、様々なセッションを楽しめたのではないでしょうか?
また来年も驚きを見せてくれることを願って、制作の現場に戻りましょう笑