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第8回/バウンス機能を使ってみる

こんにちは。
G2 Studios サウンドチームのサキサキです。
CRI Atom Craft についてのnote連載を始めてから約2年、今回で記念すべき10回目の投稿となりました!パチパチ

では、記念投稿なのでスペシャルな機能を!
と言いたいところではありますが、やはりここは実務ベースでいきたいと思います(笑)
よくある「初級・中級・上級」というような区切りではない実務ベースでの機能紹介、これがこの連載の特徴です。

▼これまでの連載はマガジンにまとめてあります

今回は、縁の下の力持ち「バウンス機能」と呼ばれるちょっと特殊な機能についてご紹介いたします。



■作業環境

本記事は以下の環境下での作業内容を記載いたします。

Windows :Windows 10 Pro
CRI SDK :criware_sdk_unity_v3_07_01_smartphone_ja


■バウンス機能とは

「バウンス機能」はAtom Craft上で再生する音を1つの波形ファイル(WAVE)として書き出す機能です。

■バウンス機能の用途

用途についての制限は特にないため、ここでは私自身の業務における使用例をいくつか挙げたいと思います。


<バウンス機能の使用例>
①ゲーム内利用
・既存音源を利用した別音源を作成する
・多重音再生時の負荷を軽減する
・ゲーム内演出のスキップ時にサウンドが上手くスキップされない(※スキップされた箇所が音の鳴り始めになる)のを回避する

②ゲーム外利用
・映像に合わせてリアルタイム録音し、簡易デモを作成する
・他セクション担当者との認識合わせに使用する(※特に即時性が求められる場面での効果は絶大)
・AtomCraftで鳴る音(※音量、音圧などのバランス調整済み)をプロモーションムービーなどのゲーム外コンテンツで使用する
・プレゼン資料用の簡易音源を作成する


こうして見ると、なかなか良い感じにポイントを押さえられているのではないでしょうか…自画自賛(笑)
 

■Atom Craftでバウンス機能を使ってみる

習うより慣れろ!
まずは実際にAtom Craftでバウンス機能を使ってみましょう。

ゴール条件は以下の通りとします。


<ゴール条件>
バウンス機能を使い2つの音「豪雨」「雷」から1つの波形ファイル「雷雨」を作成する


AtomCraftを起動し、作業を始めるための準備を行います。
※キューシートやキューの作成など、基本的なサウンドデータの作成方法についてはこちら

2つのサンプル音源「Se_Weather_HeavyRain.wav」「Se_Weather_Thunder.wav」をAtom Craft内にインポートしておきます。
※こちらは私が作成したものなので、自由にご利用ください!

<手順①>
ワークユニット上に新規でキューシート&キューを作成し、共に名前を「Se_Weather_Thunderstorm」にします。

<手順②>
マテリアルツリーにある該当マテリアルを先ほど作成したキューに向けてDrag&Dropし、トラックを作成します。

この時、キューに設定されているシーケンスタイプは初期設定で「ポリフォニック」が設定されてますので、キューを再生させるとその中に作成されたトラック(つまり、「豪雨」「雷」の2つの音)が同時に再生されるかと思います。

<手順③>
キュー「Se_Weather_Thunderstorm」を選択した状態でメニュー「バウンス」を押下し、表示されたプルダウンから「キューのバウンス」を選択します。
「バウンス設定」ダイアログが開き、バウンスが開始されます。
※通常、「バウンス設定」はバウンスの実行前に行いますが、ここでは一旦後回しにして初期設定のままで進めます。

キューの長さ分のバウンスが行われると自動で停止し、併せてダイアログも閉じられます。

<手順④>
マテリアルツリーにマテリアルフォルダ「bounce」が作成され、その中にキューと同じ名称のマテリアル「Se_Weather_Thunderstorm.wav」が作成されていることが確認できます。

作成された波形ファイルはこちら。

再生して意図通りの音が鳴っていたら作業は完了です。

■バウンス時における注意点

バウンス時における注意点をいくつか挙げておきたいと思います。


<バウンス時における注意点>
・バウンス機能はあくまでもアリモノを録音することに特化した機能であり、ゼロから音を作り出す機能ではありません。
そのため、作成された波形ファイルについては、トリミング(※音のない不要な部分をカット)やバランス調整(※左右&正負音量差、及び音圧などのバランス調整)など他アプリケーションによる調整を必要に応じて行う必要があります。

・ランダム再生など再生毎に内容が異なる流動的要素については、バウンス時に再生されていたものだけが波形ファイルとして書き出しされます。 
作成された波形ファイルにはキュー再生時のような流動的要素は含まれませんので、全ての再生パターンを必要とする場合、その分の波形ファイルを別途バウンスにより作成する必要があります。

・バウンスされる音はエンコードで圧縮された後の音のため、バウンス前にAtom Craftで鳴っていた音とバウンス後に作成された波形ファイルの音を聴き比べると、大なり小なり差異が発生します。
特に、バウンス前と後との出力チャンネル数が異なる場合、その差は顕著に現れます。
作成された波形ファイルが意図していた通りに鳴るかどうか、意図しない形となった場合それを許容範囲とできるかどうか、などしっかりとチェックするようにしましょう。


■バウンス設定

後回しにしていたバウンス設定について説明します。
調整項目は下記の8つです。

<バウンス設定> *代替テクスチャ(クリックで拡大)

敢えてこの中から1つだけ重要なものを挙げるとすれば、音の鳴り方に直接影響する「チャンネル数」の項目になるかと思います。
また、チャンネル数が変わると再生パフォーマンスやダウンロードサイズなどにも大きく影響しますので、用途にあわせて適切な設定を行いましょう。
 

■気になる点とその対応策

※2022年11月時点での情報となります。

致命的な内容ではありませんが、「キューのバウンス」を実行した場合、音が最後まで流れきっていないにもかかわらず、途中でバウンス停止することがあります(※全てが全てではありません)。

これについてはCRI・ミドルウェア社側でも既知の問題とのことで、「今後改善を行う予定だ」という回答をいただいてます。
では「改善されるまでどうするか」というところですが、いくつかの有効な対応策(※ほんの一手間くらいです)を用意しましたので、それらを挙げておこうと思います。


<「キューのバウンス」実行時の途中停止問題の対応策>
・「キューのバウンス」ではなく、「最大バウンス時間(※波形の終端から●●msecほど経過した位置)」を設定する方法でバウンスを実行する

・タイムライン上の任意の箇所(※波形の終端から●●msecほど経過した位置)に「シーケンスエンド」のマーカーを作成して「キューのバウンス」を実行する

・使用する波形ファイルの後方に予め無音部分(※もとの波形の終端から●●msecほどの長さ)を挿入しておき「キューのバウンス」を実行する


この問題については、もととなる波形の長さに何かしらの方法で幾分かの時間(※「●●」で記載)を付加することで解決に向かうようです。
文章だと一見難しく捉えられがちですが、どの対応策もほんの一手間くらいのものですね。


■まとめ

いかがでしたでしょうか。
「バウンス機能」はゲーム実装にどうしても必要な機能というわけではありませんが、サウンド業務全般を通して見ると、使用機会に恵まれた非常に便利な機能であることがわかります。
また、同様の作業は他のツールを利用しても行えますが、Atom Craftのみでゲーム実装またはそれに近しい形にまで仕上げられる「手軽さ」が最大の魅力だと感じます。
まだ使用したことのない方は、是非一度お試しいただければと思います。

今回のnoteは以上となります。
 
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